小アジが10尾ほど入って200円だったので、小さいし、煮たり焼いたりすれば丸ごと食べられるだろう、とあまり深く考えずにそれを1パック買った。
揚げる羽目になった。
小さいが、骨は鋭く、「小アジ 丸ごと」で検索すると揚げ物のレシピしか出てこなかったのだ。
スーパーではなんとなく、オリーブオイルで小アジを炒めてトマト缶で煮る、という料理をぼんやり思い浮かべて、ホールトマトをふたつも買っていたが、仕方ない。丸ごと食べる方法があるのなら丸ごと食べるべきだ。
「簡単!小アジの丸ごと唐揚げ」
これを作ることにした。
①小アジを捌きます
②水気を切り、塩コショウ、片栗粉をまぶします
③フライパンに揚げ油を熱し、揚げます
③お好みでレモンをかけて完成
なるほど、こう見ると簡単だ。
だがしかし。①に宇宙が迷い込んではいないだろうか…?
調べていくと、小アジは手で捌けるらしいが、"ゼイゴ"を包丁で取り除く必要があるようだ。ゼイゴが何かわからなかったが、小アジを触ったらすぐに分かった。いかにも取り除かれるべきといった、骨みたいな、鱗みたいなものが、尻尾の方に走っている。
これらの情報をもとに勘で捌いたが、おおむね及第点だろう。
ああ、疲れた。肉が恋しい。
さて、臭みが消えるのかなあと適当な理論で塩こしょうを多めに振ったが、これは結果的によかった。味のしない揚げ物など、ただただキャノーラ油の摂取媒体となるのみである。
フライパンに油を注いで、魚を機嫌よく入れていき、ふと、入れすぎなことに気づく。実家の母親は、揚げ油の中に一気に食材を入れていただろうか、否。入れちゃー上げ、入れちゃー上げ、これが揚げ物をする人間の動作パタンである。
私は高温の油の中のアジを、いくつか、片栗粉をまぶすときに使ったビニール袋に戻した。ビニールが溶けないか一瞬不安になったが、そこはビニールの矜持を信用することとした。私は近頃、健康被害に対してしばしば無頓着である。(とは言え、夜中の3時にお菓子を食べるのはやめようと思う。)
油がバチンバチンと跳ねている。おお怖。揚げ物は久しぶりだ。フライパンの蓋を盾がわりに構えながら、へっぴり腰でフライパンの中を見守る。
………。
好き勝手に飛び散る油たちの尻拭いがこの後待っているのを思いやり、もう揚げ物なんてしない…と静かに決意を新たにした。
わざわざ火を止めてから魚を皿に上げ、ひと口、食べてみたら、驚いた。塩コショウと片栗粉しか使っていないのに、唐揚げの味がする。うん、これはイケる。
期待していなかっただけにテンションが上がり、当初の予定で使おうとしていたトマト缶で、たまねぎとしめじを煮た。
これをご飯にぶっかけて(こういうのが苦手な人ごめんなさい、洗い物が減るんです。)、唐揚げをモグモグ食べたら、しめじと唐揚げの相性が良く、幸せが近かった。(板橋ハウス面白くてオススメだよ)
さらにテンションが上がり、冷蔵庫からほろよい「マンゴーとピーチ」を取り出してマンゴーの常夏の幸せを噛み締めていたら、同居人が帰ってきて、顔赤いよと言われた。
この酒のアルコール分は、3%である。