間ヒロの週末丁寧連載

ズボラ連載という一言矛盾を脱し、週一の丁寧を目指しています

グラタンの下

 

昨晩は嘘みたいに風が凪いでいた。

 

f:id:aida-hiro:20220919130038j:image

随分と久方ぶりの自炊だ。

これは何、と聞かれれば、これはグラタンの下だよ、と答えることになるのだろうか。

もちろん最初はチーズが乗っていた。

第一の失態は手持ちの耐熱皿が小さすぎたことだ。オーブンやトースターを使う料理もしてみよう、と勢い込んで今春に買った耐熱皿は、目視で13cm四方くらいの1人用である。これは世の不条理のひとつだが、作り置きが正義の1人暮らしでは、1人用は小さすぎる。1人用のカワイイ料理皿は、お料理動画のカワイイ世界観でのみ需要があるのだ。これは今回は使えぬ、と、切ってもかさが減らないカボチャを見つめて気づく。

果たしてアルミホイルで即興皿を作ってトースターで焼いたのだが、なかなか、いい焦げ目がついた。さて、保存容器に移す段階にて、おお、チーズよ。無慈悲にもおかくれになってしまった。

今月は出費が多いからともやしを使ったのもいけなかった。アルミホイルを脱したもやしたちは統一感を失い、チーズを飲み込んでしまった。

なんたる失態。

スーパーでカボチャと鶏肉を手に取った時点でグラタンを作ろうと決めていたのに、なんということだ、グラタンの下しか出来上がらなかった。

 

久しぶりの自炊だからということで許してほしいのだが、実はもう一つ大きめの失敗をした。結論から言うと、カンピロバクターに感染しかけたらしい。鶏肉のピンクの恐ろしさはトラウマ級だ。感染した、かどうか分からないのだが、昨晩胃がムカムカしたり腹痛に襲われたりした原因はきっと、鶏肉にあり得る。

鶏の一枚肉を生のまま切るのが嫌すぎて、茹でてから切ろう、と思い立ち、それ自体は悪いことではなかった。身が締まってからの方が格段に切りやすかったし、水分の損失も少なく済んだ。ただ、中心部分がちょっとピンクだったのを見逃したのだ…。どうもせっかちでいけない。

しかも肉塊を切って現れたそのピンクを見た時、うわぁおいしそ〜…と吸い寄せられるようにそれを口に運び、んっこれダメなやつだ。と本能で思ったものの、恐らくもうお風呂くらいの温度であったに違いない鍋のお湯でしゃぶーしゃぶーとしてうん、なんかいける気がする、と根拠のない自信にて、そのままカンピロバクターに感染した。多分。愚かしい。自分、成人している。

鶏の生肉はもっとおどろおどろしい紫とかをしていてくれ、と願う夏休み最終日の午後である。

馬鹿みたいに風が強い。